エムポックス(サル痘)との戦いはまだ続いている…コンゴ民主共和国で新型ウイルスによる流行が発生

電子顕微鏡で見たヒトの皮膚から採取したサル痘ウイルスの様々なウイルス粒子。

電子顕微鏡で見たヒトの皮膚から採取したエムポックスウイルスの様々なウイルス粒子。

Smith Collection/Gado/Getty Images

  • 新型のエムポックスウイルスは「これまでで最も危険」な型であり、世界的な脅威となる可能性があると専門家が指摘した。
  • コンゴ民主共和国で発生したこの新型エムポックスウイルスの「クレードIb」は、ルワンダの国境まで広がった。
  • 専門家によると、このエムポックスウイルスは「憂慮すべき」方法で広がっており、飛行機で運ばれる可能性があると述べている。

エムポックスウイルスによって引き起こされる致死性のある新型のエムポックス(サル痘)が急速に拡大しており、世界の保健当局は警鐘を鳴らしている。

ルワンダ大学(University of Rwanda)の講師であるジョン・クロード・ウダヘムカ(John Claude Udahemuka)は2024年6月25日の記者会見で、この新型ウイルスは「すでに知られているすべてのエムポックスの株の中で最も危険であることは間違いない」と述べた。このウイルスは流産や失明を引き起こしていると彼は話している。

2022年に世界的に流行した初期のエムポックス「クレードIIb」と呼ばれる初期の軽症型のウイルスは、最終的にアメリカで3万2000人以上が感染し、うち58人が死亡している。そのため、世界保健機関(WHO)は公衆衛生上の緊急事態を宣言したが、2023年にその宣言は解除されている。

今回の新型ウイルスは初期のエムポックスの突然変異であるため、「クレードIb」と呼ばれている。最初は2023年9月にアフリカ中部のコンゴ民主共和国で発生してから、ルワンダやブルンジ、ウガンダの国境沿いの町に広がっている。

パンデミックを警告するには至らなかったものの、専門家たちはこの新しいウイルスの「クレードIb」が世界的な大流行を引き起こす可能性を危惧している。

「パンデミックの問題は難しい」とオックスフォード大学(Oxford University)のグローバルヘルスネットワーク(The Global Health Network)のディレクターであるトゥルーディ・ラング(Trudie Lang)は会見で述べた。

「我々は今、本当に用心深く、この地域で可能な限り早くこれを食い止めるために動く必要があると考えている」と彼女は語った。

「このウイルスが飛行機に侵入する可能性は間違いなくある」

新型のエムポックスは簡単に蔓延する

エムポックスは密接な接触、特に皮膚と皮膚の接触によって広がるウイルスだ。インフルエンザのような症状を引き起こし、痛みやかゆみを伴う発疹が生じ、膿を持った水疱、病変、最終的にはかさぶたとなる。

コンゴ民主共和国のエムポックスの患者の手のひら

コンゴ民主共和国のエムポックスの患者の手のひら。

Centers for Disease Control and Prevention

これまでのこの病気のウイルス株の感染力は限られていた。コンゴ民主共和国で長く流行しているウイルス「クレードI」は、そのほとんどが家庭内での感染に関連していたとランドは言う。一方で世界的に流行したウイルスの「クレードIIb」は、ほとんどが性行為で感染し、男性と性行為をする男性が多く感染している。

新型ウイルスの「クレードIb」はすべてを兼ね備えているようだ。

研究者たちによると、新型ウイルスは、地元の風俗産業を介した性的感染によって広がり始めたという。しかし新型エムポックスウイルスは家庭内や母親と子どもの間でも広がっており、家庭外で性的接触を伴わない人から感染するケースもあるという。

このことは、「非常に心配」だとラングは話す。というのも、以前の株よりも感染を拡大させる機会が増えてしまうからだ。

新型ウイルスが出現した「クレードI」は、「クレードII」よりも致死率が高い。WHOによると、一部の発生地では感染者の10%が死亡した例もあるという。

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